SCJについて

(以下は、2007年5月、SCJ立ち上げ当初に代表の三戸が執筆)
1.ソーラークッカー・ジャパンの活動の背景
(砂漠化)
「砂漠化」という言葉は聞かれた方も多いと思います。世界で最も貧困層の多いアフリカでも森林減少とその結果生じる砂漠化は深刻で、例えば日本での国土に占める森林面積が7割を超えているのに対し、アフリカ東部に位置するケニアのそれはわずか2%となっています。(さらに非公式な数字で、実際はもっと悪いのではないか、との話もあります)。
(森林減少の要因とその抑制)
では、森林減少の要因は何かというと、地域によって様々だ、というのが正確な表現だと思います。気候変動の影響もあるでしょうし、家畜の増えすぎによる所もあるでしょう。他にもいろんな要因が考えられます。しかしそういう様々な要因がある中で、「森林減少を直接的・具体的に止めるための有効な活動」があります。それは、「人の手によって木を切らないこと」です。私たちソーラークッカー・ジャパンは、「出来るだけ木を切らないで済む生活」をアフリカの人々の間で実現させるため、活動を始めたところです。
(アフリカで木が切られている状況)
では、アフリカでは木が多く切られている現状があるのでしょうか。残念ながら、私たちはその点について正確なデータは持っていません。ただし、これまでインターネットなどで集めてきたデータやケニアの現地NGOからの情報、あるいは、アフリカ各国大使館からの伝聞情報によれば、「経済的に貧しい人々が、木を切って炭にしたもの、あるいは加工しない焚き木そのものをわずかな収入源として販売している。そして、その売られた木は調理用の燃料として使われている」という事態が多いらしいのです(難民キャンプがある場所について言えば、難民と周辺の貧しい人たちの間で木と食糧の物々交換が行われているようです。難民キャンプには援助物資としての食糧供給はいっぱいあるが、調理をする燃料が無い、ということがあるからだそうです)。
(調理用燃料の代替は・・・)
そのような木の伐採を止めるにはどうすればよいか。まず私たちが考えたのは「調理用の燃料に木を使わないようにすればよいのではないか」ということです。調理が別の方法で可能になれば、あえて貴重な木を使って森林伐採を促進する必要はなくなります。
では、木に代わる燃料源として何が考えられるでしょうか。そこで私たちが着目したのが、「ソーラークッカー」という調理器具です。
(ソーラークッカー)
ソーラークッカーとは、太陽の光を集めて熱に変え、その熱で調理をする道具です。別に私たちが発明した訳ではなく、既にインドをはじめいくつかの国では日常生活に使われている所もあるようです。また、各国でソーラークッカーの様々な普及活動が進められる中で、パネル式、パラボラ式、箱式などいろいろ形態のソーラークッカーが既に開発・実用化されています。
 
2.ソーラークッカーの課題
(ソーラークッカーの課題)
ところが、残念ながらソーラークッカーが森林伐採が深刻な地域で既に十分普及しているかというと、そうではありません。一番の課題は価格と性能のジレンマです。例えば、集光能力の一番高いパラボラ式は、晴天下にちょっとした鍋のお湯であれば10分弱で沸かすことが可能です。そのパワーの強さは、正直実際に見てみると驚くものがあります。しかし、問題はそれに対応する価格で、性能のよいパラボラ式のクッカーは太陽光の反射能力の高い質のよい金属を使うため、一台のソーラークッカーが数万円してしまうのが現状です。せめて数千円台まで価格を落とすことができれば普及のペースはだいぶ違うのでしょうが、残念ながらそこまでの段階には至っていません。
(パネル式ソーラークッカー)
一方、価格を下げることを徹底した「パネル式」という簡易型のソーラークッカーも既に販売・製造されています。パネル式ができた背景には1994年にルワンダで起きた大規模なジェノサイドが背景にあり、そこで発生した百万単位の難民が、難民キャンプ周辺の木々を燃料として太陽に伐採してしまう状況を少しでも抑えるため、安価なソーラークッカーが開発された事情があります。しかし残念ながら、簡易であるために性能がまだ十分高くなく、難民キャンプのような緊急時以外の用途としては、十分拡がりをみせてはいない状況です。